8月27日(水)に「
情報教育研究フォーラム2008」に行った.
午後の分科会では,大学生が模擬授業という形式で,情報セキュリティを専門とする大学教員の指導のもと行われた.これは,学生を育てる,という目的もあるが,「現場の高校教員に,大学から最新の科学的知識を提供する」という意図もあるだろう.
しかし,模擬授業で生徒が利用すると想定されたプリントで
____________から個人を特定できるのは,事件などで正当性があるときだけ
という穴埋めがある.正解は「個体識別番号」とのことだ.
これは,「高木浩光@自宅の日記」での
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国民生活センターの不適切なアドバイス事例
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日本のインターネットが終了する日
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「日本のインターネットが終了する日」あとがき
などのエントリを見れば,事実に反することが分かる.
「個体識別番号は,個人が特定され得る.」ものである.
もちろん,学校現場では科学的には間違っている指導を行うことは良くあり,その教育的・道徳的効果は認める.
しかし,今回は教育的・道徳的利点は見あたらない.しかも,危険側に倒れている.
「間違った知識が高校教員→高校生へと伝わってしまう.」問題はもちろんである.が,もっと多くの問題をはらんでいるように感じる.
個体識別番号の問題は何も新しい問題ではなく,「IPアドレスは変更できる」「Windows Media Playerのスーパーcookie」など,すでにあった問題である.
それを押さえられていない「セキュリティを専門とする大学教員」とは何なのか.
それから「まずい実装に高校生・大学生がマヒし,思考停止してしまう」ことが心配だ.高木は「日本のケータイサイト開発者の技術力が後退していく」と先の3つ目のエントリで述べる.同じことで,科学的に常に考える学生を私は育てたいし,大学教員にも育ててほしい.